潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎(UC)とは

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に慢性的な炎症が起こり、潰瘍やびらん(ただれ)が形成される原因不明の炎症性腸疾患(IBD)です。症状が落ち着く「寛解(かんかい)」と、悪化する「再燃(さいねん)」を繰り返すのが特徴で、厚生労働省から指定難病に認定されています。
近年、日本国内での患者数は急増しており、若年層から高齢層まで幅広い年齢層で発症が見られます。適切な治療を行わないと、大腸がんの発症リスクが高まるだけでなく、日常生活に著しい支障をきたすため、専門的な長期管理が求められます。

病型と分類

潰瘍性大腸炎は、炎症が及んでいる範囲によって大きく3つのタイプに分類されます。

  • 直腸炎型: 炎症が直腸のみに留まるもの。
  • 左側大腸炎型: 炎症が直腸から脾弯曲部(大腸の左側の曲がり角)まで及ぶもの。
  • 全大腸炎型: 炎症が大腸全体に広がっているもの。

一般的に、炎症範囲が広いほど、また発症年齢が低いほど重症化のリスクが高いとされています。

主な症状と診断の指標

潰瘍性大腸炎の主症状は、持続的な下痢と血便です。

  • 粘血便(ねんけつべん): 便に血液や粘液(鼻汁のようなもの)が混じる。
  • 頻回の下痢: 重症化すると、1日に10回以上の排便が必要になることもあります。
  • 腹痛・しぶり腹: 排便後もすっきりせず、常に便意を感じる状態。
  • 全身症状: 発熱、貧血、頻脈、急激な体重減少など(中等症以上で見られます)。

診断における内視鏡検査の役割

確定診断には、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)が必須です。当院では以下の評価を精密に行います。

■粘膜所見の評価

血管透見(粘膜下の血管の見え方)の消失、粘膜の粗造感、自発性の出血、潰瘍形成などを詳細に観察します。

■粘膜治癒(Mucosal Healing)の判定

近年の治療目標は、単に「症状がなくなること」ではなく、内視鏡で見て「粘膜に炎症が全くない状態(粘膜治癒)」に到達することに置かれています。粘膜治癒を達成することで、再燃のリスクを抑え、将来の大腸がん合併リスクを劇的に下げることが可能となります。

■組織学的検査(生検)

内視鏡で粘膜の一部を採取し、顕微鏡で細胞の状態を確認することで、他の感染性腸炎やクローン病との鑑別を行います。

薬物療法と治療方針

当院では、ガイドラインに基づき、患者様の重症度や病変の範囲に応じた治療を提供しています。

  • 5-アミノサリチル酸製剤(5-ASA): 治療の基本となる抗炎症薬です。内服薬のほか、病変が直腸に近い場合は坐剤や注腸液を併用し、局所から直接炎症を抑えます。
  • 副腎皮質ステロイド: 炎症が強い場合に短期間使用し、速やかに寛解へと導きます。
  • 免疫調節薬(アザチオプリン等): ステロイドを減量・離脱させる際や、寛解を維持するために使用します。
  • 高度な治療(分子標的薬・血球成分除去療法): 難治例に対しては、生物学的製剤(抗TNFα抗体製剤等)やJAK阻害薬など、特定の炎症物質をブロックする最新の薬剤が選択肢となります。

長期合併症としての「大腸がん」への対策

潰瘍性大腸炎の発症から8〜10年以上が経過すると、大腸がんを合併するリスクが高まることが知られています。これを「IBD関連大腸がん」と呼び、通常のポリープからのがん化とは異なるプロセス(Dysplasia)を経て発生します。
当院では、長期罹患されている患者様に対し、炎症による変形で見逃しやすいがんを早期発見するため、拡大内視鏡や特殊光診断(NBI)を用いた定期的な「サーベイランス(監視)内視鏡検査」を実施しています。

当院までご相談下さい

潰瘍性大腸炎は長く付き合っていく必要のある疾患ですが、現在は優れた薬剤の登場により、多くの方が健康な人と変わらない日常生活を送ることが可能です。血便や長引く下痢にお悩みの方、また現在の治療で寛解が維持できずにお困りの方は、当院までご相談ください。


監修:鹿児島中央駅西口消化器内科・胃大腸内視鏡クリニック
院長 細川 泰三

TOPへ