食欲不振

食欲不振(食欲減退)とは

食欲は、脳の視床下部にある中枢のバランスや、胃から分泌されるホルモン(グレリンなど)の相互作用によって制御されています。食欲不振とは、これらの生理的なメカニズムが、疾患、精神的ストレス、あるいは薬剤の影響などによって阻害された状態を指します。
短期間であれば大きな問題にならないことも多いですが、持続的な食欲不振は「低栄養状態」を招き、免疫力の低下や筋力低下を引き起こすため、早期の介入が不可欠です。

食欲不振を引き起こす主な疾患

原因は多岐にわたりますが、大きく以下の4つに分類して精査を行います。

① 消化器疾患(器質的疾患)

  • 胃がん・食道がん・大腸がん: 腫瘍による消化管の通過障害や、食欲を抑制する物質の放出が原因となります。
  • 胃・十二指腸潰瘍: 粘膜の炎症や痛みのために食事が進まなくなります。
  • 肝炎・肝硬変・膵炎: 代謝や消化酵素に関わる臓器の不全により、強い食欲不振が生じます。

② 内分泌・代謝性疾患

甲状腺機能低下症による代謝の低下、慢性腎不全(尿毒症)による老廃物の蓄積、糖尿病の急激な悪化などが食欲不振を招くことがあります。

③ 精神的・心理的要因

うつ病や適応障害による意欲低下のほか、胃カメラで異常がないのに胃の動きが悪い「機能性ディスペプシア(FD)」が原因となることも多いです。

④ 薬剤の副作用

痛み止めのNSAIDs、抗菌薬、強心剤、抗がん剤などの副作用によって食欲が低下することがあります。

当院における「原因特定」のための検査体制

食欲不振の診断で最も重要なのは、「隠れた悪性腫瘍(がん)」を見逃さないことです。当院では以下の検査を体系的に行います。

苦しくない上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)

食道がん、胃がん、胃潰瘍の有無を確認します。当院では鎮静剤を使用し、眠っている間に検査を終えることが可能です。体力が落ちている方でも負担を最小限に抑えて実施いたします。

腹部超音波(エコー)検査

肝臓、胆嚢、膵臓、腎臓の状態をリアルタイムで確認します。特に見つけにくいとされる膵臓の病変についても丁寧に観察を行います。

血液検査による全身スクリーニング

炎症反応、貧血の有無、肝・腎機能、甲状腺ホルモン、栄養指標(アルブミン等)を測定し、全身疾患や栄養状態を客観的に評価します。

食欲不振の治療とマネジメント

原因疾患の治療と並行して、栄養状態の改善を図ります。

  • 薬物療法: 胃腸の動きを改善する薬や、食欲回復を促す漢方薬(六君子湯など)を用います。
  • ピロリ菌除菌: 除菌後に食欲を促すホルモンの分泌が正常化し、食欲が回復するケースが多く見られます。
  • 栄養指導: 少量でも高カロリーな食事の摂り方や、必要に応じて経口栄養剤の活用をアドバイスします。

当院までご相談下さい

食欲不振は、体が発している「何らかの異常」に対するサインです。「年だから少食になった」「ストレスのせいだ」と自己判断せず、特に体重減少を伴う場合は、早急に医学的な精査を受ける必要があります。

当院では、消化器専門医の立場から根本原因を究明し、皆様が美味しく食事を摂れるようサポートいたします。最近食が細くなったと感じる方や、ご家族の栄養状態が心配な方は、ぜひ当院までご相談ください。

監修:鹿児島中央駅西口消化器内科・胃大腸内視鏡クリニック  院長 細川 泰三

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