吐き気・嘔吐とは
吐き気(悪心)や嘔吐は、脳の延髄にある「嘔吐中枢」が刺激されることで起こる生体防御反応の一つです。この中枢は、消化管からの情報だけでなく、血液中の化学物質、平衡感覚、あるいは脳圧の上昇など、多方面からの情報に反応します。
そのため、吐き気の原因は必ずしも「胃腸」だけにあるとは限りません。まず「どこに異常が起きているか」を調べることが、適切な治療への第一歩となります。
吐き気の主な原因
臨床的には、原因を以下の4つのカテゴリーに分類して考えます。
① 消化器系疾患(最も頻度が高い)
- 急性胃炎・感染性腸炎: ウイルスや細菌、アルコールなどの刺激。
- 胃・十二指腸潰瘍: 炎症や、通り道の狭窄(幽門部狭窄)が原因となります。
- 腸閉塞(イレウス): 腸が詰まることで内容物が逆流します。激しい腹痛や張りを伴います。
- 胆石症・胆嚢炎・膵炎: 油っこい食事の後の激痛と吐き気が特徴です。
② 脳・神経系疾患(緊急性が高い)
脳出血やくも膜下出血、脳腫瘍などにより脳圧が高まると、前兆のない「噴水状の嘔吐」や激しい頭痛、意識障害を伴うことがあります。
③ 内分泌・代謝・中毒
糖尿病ケトアシドーシス、腎不全による尿毒症、あるいは薬剤(鎮痛薬や抗がん剤など)の副作用が原因となることがあります。
④ 心血管・その他
心筋梗塞が「吐き気・みぞおちの違和感」として現れる場合や、急激な眼圧上昇(緑内障)により激しい吐き気が生じる場合もあります。
「すぐに受診すべき」緊急性の高いサイン
以下のような症状がある場合は、命に関わる疾患や緊急手術が必要な可能性があるため、直ちに医療機関を受診してください。
- 激しい頭痛を伴う場合(脳疾患の疑い)
- 突然の胸痛や背部痛を伴う場合(心筋梗塞・大動脈解離の疑い)
- 吐血や下血(黒い便)がある場合(消化管出血の疑い)
- 激しい腹痛があり、おならや便が全く出ない場合(腸閉塞の疑い)
- 意識が朦朧としている、または強い脱水症状がある場合
当院における精密診断のアプローチ
原因不明の吐き気が続く場合、当院では以下の検査を組み合わせて迅速に原因を特定します。
上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)
胃がん、食道がん、胃潰瘍、胃炎の有無を直接確認します。当院では鎮静剤を用いて、吐き気で敏感になっている患者様でもリラックスして受けられる「苦しくない内視鏡」を徹底しています。
腹部超音波(エコー)検査
胆石、胆嚢炎、膵炎、尿管結石、腸閉塞の有無、あるいは腹水の貯留などをリアルタイムで観察します。放射線被曝のない安全な検査です。
血液検査・レントゲン検査
炎症反応、肝・膵酵素、電解質、血糖値を測定するほか、レントゲンで腸管内のガスの分布や消化管穿孔の有無を診断します。
治療のポイント
原因疾患の治療と並行して、苦痛を取り除く対症療法を行います。
- 薬物療法: 制吐剤(吐き気止め)や胃粘膜保護剤を使用します。※原因が腸閉塞などの場合は慎重に判断します。
- 補液(点滴)療法: 嘔吐による脱水や電解質不足を補い、全身状態の改善を図ります。
- 生活指導: 症状が落ち着くまでの絶食や、経口補水液による少量ずつの水分補給をアドバイスします。
当院までご相談下さい
吐き気や嘔吐は、体が発している重要なアラート(警告)です。「食べ過ぎかな」と自己判断して放置せず、特に症状が繰り返す場合や、他の不快な症状を伴う場合は、専門的な診断を受けることが早期回復への近道です。
当院では、内視鏡専門医としての経験を活かし、消化器疾患はもちろん、全身疾患の可能性まで視野に入れた丁寧な診療を行っております。原因のわからない吐き気でお困りの方は、ぜひ当院までご相談ください。
監修:鹿児島中央駅西口消化器内科・胃大腸内視鏡クリニック 院長 細川 泰三





