お腹の張り

腹部膨満感のメカニズム

「お腹が張る」「ガスが溜まって苦しい」といった腹部膨満感は、主に以下の3つのメカニズムによって発生します。私たちは診察において、これらが「一過性の機能的なもの」か、それとも「治療が必要な器質的なもの」かを慎重に鑑別します。

  • 消化管内の空気・ガスの増加: 早食いによる空気の呑み込み(呑気症)や、腸内細菌による異常発酵。
  • 内容物の停滞: 便秘や腸閉塞(イレウス)による便・ガスの通過障害。
  • 腹腔内の容積変化: 腹水(お腹に水が溜まる)や、巨大な腫瘍、高度な肥満。

疑われる主な疾患と病態

お腹の張りを引き起こす代表的な疾患は以下の通りです。

① 大腸がん・腸閉塞(緊急・重要)

大腸がんが進行して腸の通り道が狭くなると、便やガスがスムーズに排出されず、お腹がパンパンに張るようになります。完全に詰まってしまうと「腸閉塞(イレウス)」となり、激しい腹痛や嘔吐を伴う緊急事態となります。

② 便秘症・過敏性腸症候群(IBS)

最も頻度の高い原因です。大腸の動きが悪いために便が停滞し、そこで細菌がガスを発生させます。また、ストレスなどが原因で腸が過敏になり、わずかなガスでも強い張りを感じるケース(IBS)も多く見られます。

③ 小腸内細菌増殖症(SIBO)

近年注目されている病態です。本来、細菌が少ないはずの小腸内で細菌が異常増殖し、食後すぐに大量のガスを発生させることで、強い張りと腹痛、下痢・便秘を引き起こします。

④ 肝硬変・心不全(腹水)

肝臓の機能が低下したり、心臓のポンプ機能が弱まったりすると、血管から水分が漏れ出し、腹腔内に「腹水」として溜まります。これは単なるガスとは異なり、全身管理が必要な病態です。

⑤ 呑気症(どんきしょう)

無意識のうちに大量の空気を呑み込んでしまう状態で、ゲップやおなら、お腹の張りが持続します。ストレスや噛み締め癖が関与していることが多いのが特徴です。

当院における精密診断

お腹の張りの原因を特定するため、当院では以下の検査を体系的に実施します。

大腸内視鏡検査(大腸カメラ)

お腹の張りが続く場合、最も懸念されるのは「物理的な狭窄(大腸がん)」です。当院では最新の内視鏡システムとAI診断補助を用い、盲腸から直腸まで細部を精密に観察します。

  • 炭酸ガス(CO2)送気: 検査中、空気に比べて吸収が200倍速い炭酸ガスを使用するため、検査自体による「お腹の張り」を最小限に抑えます。

腹部レントゲン検査

腸管内のガスの量や分布、便の溜まり具合を瞬時に確認します。腸閉塞の兆候(鏡面像)がないかを診断する上で非常に有効です。

腹部超音波(エコー)検査

腹水の有無を数ミリ単位で検出できるほか、肝臓、膵臓、卵巣などの腫瘍によってお腹が圧迫されていないかを非侵襲的に確認します。

血液検査

炎症反応、肝機能、アルブミン(栄養状態・腹水のリスク)、電解質などを測定し、全身疾患の可能性を評価します。

専門的な治療とマネジメント

原因に応じた最適なアプローチを行います。

  • 大腸がん・ポリープの場合: 早期であれば内視鏡切除、進行していれば外科的治療へ繋げます。
  • 慢性便秘症の場合: 従来の刺激性下剤だけでなく、腸管内の水分を調節する最新の便秘治療薬を用い、自然な排便を促します。
  • 過敏性腸症候群・SIBOの場合: 腸の動きを整える薬や、特定の漢方薬、あるいは食事指導(低FODMAP食の提案)を通じて、ガス産生を抑制します。
  • 腹水の場合: 利尿剤の使用や、背景にある肝臓・心臓疾患の専門治療を優先します。

日常生活での改善アドバイス

  • 食習慣の見直し: 食物繊維のバランス、発酵食品の相性を確認します。
  • 適度な運動: 歩行などの運動は腸の蠕動(ぜんどう)運動を助け、ガスの排出を促進します。
  • ストレスマネジメント: 自律神経の乱れは腸の動きに直結するため、リラックスできる環境作りをアドバイスします。

当院までご相談下さい

お腹の張りは、日常的な悩みとして軽視されがちですが、実は大腸がんや内臓疾患の重要なサインであることがあります。「ガスが溜まっているだけだろう」と放置せず、特におならや便が出にくい、お腹が硬い、体重が減っているなどの症状がある場合は、早急に専門医の診察を受けてください。

当院では、内視鏡専門医が高度な診断技術を駆使し、お腹の張りの根本原因を突き止めます。苦しくない検査を通じて、皆様の安心と健康をサポートいたします。

監修:鹿児島中央駅西口消化器内科・胃大腸内視鏡クリニック  院長 細川 泰三

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