「つかえ感」が示す身体のサイン
のどや胸のつかえ感(嚥下困難・異物感)は、消化器内科において極めて重要な症状です。医学的には、実際に「物理的な狭窄(通りにくさ)」がある場合と、粘膜の炎症や神経の過敏によって「つかえているように感じる」場合の2通りに分けられます。
特に、水分は通るが固形物が通りにくい、あるいは日を追うごとにつかえ感が強くなるという場合は、進行性の病変が隠れている可能性が高く、一刻も早い精密検査が求められます。
疑われる主な疾患と病態
「のど」か「胸(食道)」か、場所によっても疑われる疾患が異なります。
① 食道がん(最優先で除外すべき疾患)
食道の壁にがんができると、通り道が狭くなり、つかえ感が生じます。初期は無症状ですが、特定の場所で食べ物が止まる感覚がある場合は要注意です。特にお酒を飲んで顔が赤くなる体質の方、喫煙習慣がある方はリスクが非常に高いです。
② 逆流性食道炎(GERD)
胃酸が食道へ逆流し、粘膜に炎症を起こします。炎症がのどの付近まで及ぶと、のどの違和感(ヒステリー球)として自覚されます。慢性化すると食道が狭くなる「食道狭窄」を引き起こすこともあります。
③ 好酸球性食道炎
アレルギー反応により食道の壁に炎症が起き、食道が硬く狭くなる疾患です。近年、若い世代を中心に増加傾向にあります。
④ 食道アカラシア
食道の筋肉を動かす神経の異常により、胃への入り口が正常に開かなくなる疾患です。食べ物が食道に停滞するため、強い胸のつかえや食後の嘔吐を伴います。
⑤ 咽喉頭異常感症(ヒステリー球)
検査で物理的な異常が見つからないにもかかわらず、のどに玉が詰まっているような違和感がある状態です。ストレスや自律神経の乱れが関与していると考えられています。
当院における精密診断
「つかえ感」の原因を特定するため、当院では上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を軸とした高度な診断を行います。
NBI(狭帯域光観察)による早期がんの発見
食道の早期がんは非常に平坦で、通常の光では見落とされやすい特徴があります。当院では血管を強調する特殊光(NBI)を用いることで、微小な病変を確実に捉えます。
拡大内視鏡による質的診断
病変を発見した場合、その場で最大80〜100倍まで拡大観察を行い、がんの深達度(深さ)を推定します。これにより、適切な治療方針を迅速に判断します。
咽喉頭領域の綿密な観察
内視鏡を挿入する際、のどの奥(下咽頭)も詳細に観察します。原因がのど(咽頭がんなど)にあるケースも見逃さないよう徹底的にチェックいたします。
当院の「苦しくない」内視鏡検査体制
のどや胸につかえ感がある方は、反射(オエッとなる嘔吐反射)が強い傾向にあります。当院では、以下の工夫で苦痛のない検査を提供しています。
- 鎮静剤の使用: 意識を軽く静めた状態で検査を行うため、のどの違和感をほとんど感じることなく、リラックスして受けていただけます。
- 極細経鼻内視鏡: 鼻からの挿入を選択することで、舌の根元を刺激せず、反射を最小限に抑えることも可能です。
治療とケアの進め方
診断結果に基づき、最適な治療を開始します。
- 逆流性食道炎の場合: 強力な胃酸分泌抑制薬(P-CAB等)を処方し、粘膜の炎症を鎮めます。
- 食道がんの場合: 早期であれば内視鏡切除(ESD)が可能です。進行がんの場合は、高度医療機関と速やかに連携します。
- 機能的異常の場合: 漢方薬(半夏厚朴湯など)や抗不安薬を用い、のどの緊張や神経の過敏を緩和します。
当院までご相談下さい
のどや胸のつかえ感は、日常的な不快感であると同時に、消化器系が発する深刻なSOSであることも少なくありません。特に「飲み込みにくい」という実感を伴う場合は、自己判断で放置するのは極めて危険です。
当院では、内視鏡専門医が最新の機器を駆使し、つかえ感の正体を精緻に突き止めます。「検査が怖い」と躊躇されている方も、当院の鎮静内視鏡であれば安心して受けていただけます。少しでも違和感がある方は、ぜひ当院までご相談ください。
監修:鹿児島中央駅西口消化器内科・胃大腸内視鏡クリニック 院長 細川 泰三





