過敏性腸症候群
(IBS:irritable bowel syndrome)

過敏性腸症候群(IBS:irritable bowel syndrome)ってどんな病気?

過敏性腸症候群過敏性腸症候群(IBS)は、腹痛や腹部不快感、排便異常(下痢、便秘、または便秘と下痢を交互に繰り返すなど)、腹部膨満感などのおなかのつらい症状が週に1回以上、3か月以上にわたって慢性的に継続しているにもかかわらず、さまざまな検査を行っても腸自体には症状の原因となる明らかな異常が見つからない病気です。
20~40歳代の若い女性に多く見られ、若い人の6人に1人は、過敏性腸症候群(IBS)の症状で悩んでいるという報告があるほど、現代の日本人にとって非常に一般的な病気です。過敏性腸症候群患者の約1/2~2/3は10代までに発症し、年齢とともに患者数は減少すると報告されています。また、男性では下痢を伴うことが多く、女性では便秘を伴うことが多いという報告もあります。

過敏性腸症候群の主な症状

過敏性腸症候群では、次のような様々なおなかの不快感や症状が現れます。

これらの症状が持続する場合は、過敏性腸症候群の可能性がありますが、それ以外にも大腸がんなどの治療が必要な病気が症状の原因となっている場合もあります。症状がある場合は、絶対に放置せずに必ず消化器内科を受診しましょう。

上に示した症状に加えて、以下の項目に当てはまる場合は、過敏性腸症候群による症状ではなく、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患や大腸がんが症状の原因である可能性が高くなります。絶対に放置せずに早めに消化器内科を受診しましょう。

症状の感じ方には個人差があります。上記はあくまでも症状の一例です。この病気の症状はこれしかないということはありません。診察時にご自身が感じている症状をそのまま伝えて頂くのが最も大切です。「どういう時に症状が出やすいか」「症状を軽快させたり悪化させたりするものがあるか(姿勢や食事、行動や朝・昼・夜の時間で症状が変わるかなど)」も併せてお伝えください。

過敏性腸症候群の自己診断チェックリスト

チェックリスト腹痛や腹部不快感、排便異常(下痢、便秘、または便秘と下痢を交互に繰り返すなど)、腹部膨満感などのおなかのつらい症状がある場合は、過敏性腸症候群かもしれません。このような場合は、次の自己診断チェックリストで一度チェックしてみましょう。
このチェックリストは、現在国際的に最もよく使われている過敏性腸症候群の診断基準(RomeⅣ診断基準)です。
このチェックリストに該当する場合は、過敏性腸症候群の可能性がありますが、このチェックリストだけで過敏性腸症候群と確定診断されるものではありません。また、大腸がんや炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎など)の可能性を否定するものではありません。確定診断のためには大腸カメラ検査を受けて症状の原因となる過敏性腸症候群以外の病気がないことを確認することが最も大切です。
該当する症状がある場合は、是非一度、当クリニックにご相談ください。

過敏性腸症候群のRomeⅣ診断基準

*少なくとも診断の6か月以上前に症状が出現し、最近3か月間は下記の基準を満たす

  • 腹痛が最近3か月間で平均して少なくとも週に1日以上出現する
  • さらに下記の2項目以上の特徴を示す
    1. 排便に関連して症状が出現する
    2. 症状が排便頻度の変化に関連して出現する(便秘になる、あるいは頻回の下痢になるなどの排便頻度(回数)の変化に伴って症状が出現する)
    3. 症状が便形状(外観)の変化に関連して出現する(便が下痢便になる、硬いコロコロの便になるなどの便の形状の変化に伴って症状が出現する)

(注:診断基準の表現を原文のままではなく、一部分かりやすく改変して表記しています)

過敏性腸症候群の原因について

過敏性腸症候群は、ストレスが原因で起こると考えられていますが、実のところはっきりとした原因は、まだ現在の医学では解明されていません。
腸の運動機能や知覚機能を調整する神経制御の異常、腸内細菌叢の異常などが関与している可能性が考えられています。

①腸の運動機能や知覚機能を調整する神経制御の異常
腸には、食べ物を消化吸収し、不要な残りカスを便にして排泄する運動機能と、腸内の環境変化を感じ取る知覚機能の2つの機能があります。これらの機能は、腸と脳をつなぐ神経がコントロールしています。脳と腸は、神経を介して密接に関連しており、脳腸相関と呼ばれています。
ストレスや不安・緊張状態などのネガティブな感情が続くと、副腎皮質から副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)と呼ばれるストレスに反応するホルモンの分泌が増加します。CRHは大腸の運動を活発化させ、知覚反応を高める(知覚過敏を引き起こす)ことで、下痢や腹痛が現れると考えられています。

②腸内細菌叢の異常
感染性腸炎を経験した後も過敏性腸症候群が発症しやすいと考えられています。感染性腸炎を経験した人の10%以上が回復後に過敏性腸症候群を発症するという報告もあります。
感染により腸に炎症が起こると、腸の粘膜が弱くなるだけでなく、腸内環境を調整している腸内細菌のバランスが変化するため、腸の運動機能と知覚機能が敏感になりやすく、ストレスを感じやすい腸に変化するため、過敏性腸症候群を発症しやすくなると考えられています。
これを防ぐためには、腸炎をしっかり治療し、腸炎が回復しても、すぐに普段通りの食生活に戻すのではなく、回復後1週間程度は胃腸に負担がかからない消化が良い食事を続けて食べることが大切だと言われています。

その他にもストレスに関係なく症状が現れる過敏性腸症候群もありますが、これらは腸の形の異常や消化液である胆汁が原因になると考えられています。

過敏性腸症候群はどんな人がなりやすい?

過敏性腸症候群は、誰にでも発症する可能性がある病気ですが、最も一般的なタイプである腸管運動異常型IBS(ストレス型IBS)は、特定の気質の傾向がある人に発症しやすいと考えられています。ただし、これらの気質に該当するからといって必ずしも過敏性腸症候群を発症するというわけではありません。

  • 努力家:目標を達成するために自己犠牲をいとわず、常に結果を追い求める。
  • 几帳面:まじめで礼儀正しく、何事にもきちんと取り組む。
  • 完璧主義者:何事も完璧でないと満足できない。
  • 心配性:物事を深く考えすぎ、不安を感じやすく、些細なことでもいつまでも気にする。
  • ストレス・プレッシャーに弱い:わずかなストレスやプレッシャーでも圧倒されやすい。
  • 生活が不規則な人:夜更かしや昼夜逆転の生活が多い、暴飲暴食が多いなど、生活のリズムや飲食のリズムが乱れている人。

過敏性腸症候群の分類(サブタイプ)について

症状での分類(サブタイプ)

過敏性腸症候群は、症状に基づいて以下の3つのサブタイプと、このいずれにも該当しない分類不能型のあわせて4つのサブタイプに分類されます。

1.下痢型IBS

診断基準

過敏性腸症候群の診断基準を満たし、かつ排便のうち25%以上が軟便(泥状便)または水様便で、硬便や兎糞状便は25%未満の場合。

症状・特徴

下痢緊張やストレス、不安などがあると、突然おなかがグルグルとなり、腹痛とともに強烈な便意が現れ、頻繁に下痢が起こることが多い。突発的な腹痛なので、仕事中や授業中などでも我慢ができず、トイレに駆け込むような状況がたびたびおこりやすい。ストレスがかかる状況や、電車の中や渋滞中などのトイレに行きにくい状況、仕事中や勉強中などの集中が必要な状況などで出現しやすいという特徴もあります。若い男性によく見られる傾向があります。

2.便秘型IBS

診断基準

過敏性腸症候群の診断基準を満たし、かつ排便のうち25%以上が硬便や兎糞状便で、軟便(泥状便)または水様便は25%未満の場合。

症状

便秘型便秘があり、排便が週に1回以下のことも多い。便が出そうになっても出ないことがあり、腰まわりが常に重苦しく感じられ、排便があってもすっきりしないことや、常に残便感があることが多い。特に若い女性に多くみられ、生理前に症状が悪化しやすい傾向もあります。

3.混合型IBS(交代型IBS)

診断基準

過敏性腸症候群の診断基準を満たし、かつ排便のうち25%以上が硬便や兎糞状便で、軟便(泥状便)または水様便も25%以上ある場合。

症状

下痢と便秘の症状が2~3日、または1週間ごとに交互に繰り返す傾向があります。また、腹痛や腹部膨満感、残便感などのおなかの不快な症状も同時に現れることがあり、複数のおなかの不快な症状が存在するため、おなかの状態がなかなか安定しません。このタイプは男女ともにみられますが、女性の方が多い傾向があります。

4.分類不能型IBS

診断基準

過敏性腸症候群の診断基準を満たすが、便性状の異常が、下痢型、便秘型、混合型のいずれも満たさない場合。

原因での分類

過敏性腸症候群の分類は、下痢型IBS、便秘型IBS、混合型IBSなどの症状からの分類が一般的ですが、治療方法を考える上では、症状を引き起こしていると考えられる原因で分類するのが有用です。
下記に示した原因での分類は、過敏性腸症候群の治療経験が豊富な国立病院機構久里浜医療センター内視鏡部長の水上健先生が提唱されているものです。過敏性腸症候群の多くは、ストレスが原因と考えられますが、ストレスとは関係のない過敏性腸症候群も存在します。この分類の一番の特徴は、過敏性腸症候群をストレスが原因のものと、ストレス以外が原因のものに分けているところです。症状の原因が、異なるため治療方法も異なります。

1.腸管運動異常型IBS(ストレス型IBS)

一般的には、「過敏性腸症候群=ストレス」というイメージがありますが、このイメージ通りのストレスが原因となっている過敏性腸症候群です。強いストレスや不安を感じたり、緊張状態が続くと、腸が発作的に激しく動くために強い腹痛と下痢が現れます。自律神経を乱すストレスや不安などがきっかけとなり、腸の異常運動が起こり症状が現れるため、腸管運動異常型IBS(ストレス型IBS)と分類されます。
ストレスに対する反応は、かなり個人差があります。ストレス型IBSの患者さんの多くは、元々ストレス感度が他の人よりもやや敏感な体質の方が多いと考えられています。しかし、症状が出るかどうかは、ストレスに対する精神的な強さや弱さの問題ではなく、ストレスに対する体の反応の違い(体質)に起因するものです。ただし、これらの根本的な原因は、まだ明確に解明されていません。
多くの患者さんは、自分が下痢を引き起こすきっかけを自覚しており、高学歴の人や、コツコツと仕事に打ち込む人など、優秀な人ほど症状が現れやすいと言われています。

2.腸管形態異常型IBS

大腸の形状に問題があるため、便秘と下痢を繰り返す過敏性腸症候群です。混合型IBSの多くは、腸管形態異常型IBSと考えられています。
顔がみんな違うように腸の形状は、かなり個人差があります。特に、日本人の腸は欧米人に比べて曲がりくねっていたり、ねじれていることが多く、この腸の形状の影響で排便障害が起こるのが腸管形態異常型IBSです。
腸管のねじれた部分に便が引っかかるため、通過できなくなり、便秘を起こします。すると、便を押し出して改善させようと大腸の蠕動運動が活発になるため腹痛や不快感が出現します。また、腸は便を押し流すために、便の水分量を増加させる働きも起こします。このため、便が詰まっている部分よりも上流にはゆるい便が溜まります。詰まっていた便が何かのはずみではずれて通過すると、上流に溜まっていたゆるい便が下痢として排出されます。腸管形態異常型IBSによる混合型IBSでは、腸の決まった部分で便が詰まることが多いため、蠕動に伴う腹痛や不快感はいつも同じ場所で出現するのが特徴です。腸管形態異常型IBSは、腸の形が原因で便秘と下痢を繰り返す病態のため、ストレスとは無関係に症状が現れます。

3.胆汁性下痢型IBS

胆のうから分泌される胆汁という消化液が原因で、食後に下痢を引き起こす過敏性腸症候群が胆汁性下痢型IBSです。
胆汁は胆のうから分泌される脂肪の分解に関与する消化液です。食事の後に分泌され、小腸で脂肪の分解を助けた後、通常は大腸に入る前に小腸でほとんどが再吸収されます。一部、再吸収されなかった胆汁は便とともに排泄されます。胆汁の主成分である胆汁酸は色が茶色のため、胆汁酸の含まれる便は茶色になります。また、胆汁酸には大腸の運動を刺激し、腸液の分泌量を増やす作用もあります。
胆汁性下痢型IBSの患者さんでは、大腸に到達する胆汁の量が多いか、あるいは胆汁に対する大腸の感受性が高く、大腸運動の活発化と腸液の分泌量が増加しやすいため、食後すぐに便意を感じて下痢が起こります。早い人では食事中に便意を感じることがあります。
食事を摂らなければ下痢を起こさないのに、食事をするとすぐに便意が現れて下痢になる場合は、胆汁性下痢型IBSの可能性があります。

過敏性腸症候群の検査

過敏性腸症候群の診断は、症状が診断基準(RomeⅣ基準)を満たしていてもそれだけでは、確定診断にはなりません。
過敏性腸症候群は、様々なお腹の不快な症状があるにもかかわらず、腸自体には何も異常がない病気です。このため、検査を行い、症状の原因となる他の病気が何もないことが証明されてはじめて過敏性腸症候群と診断されます。
過敏性腸症候群の自己診断チェックリストについては、下記リンクをご参照下さい。

ときどき、年齢や症状のみから過敏性腸症候群と診断され、内服治療を受けている患者さんがいますが、消化器内科の専門医としては他の病気の可能性を排除し、しっかりと診断をつけてから治療を開始することを強くオススメします。
過敏性腸症候群の診断のためには、下記の検査を行います。

腹部レントゲン検査(腹部エックス線検査)

腹部レントゲン検査(腹部エックス線検査)では、撮影した画像から下記の情報を得ることが可能です。

レントゲン
  • 大量のガスが溜まっているかどうか
  • 溜まっている便の量や便の性状(溜まっているのは液体の便か、スポンジ様の便か、コロコロした硬い便か、など)
  • 大腸に溜まっているガスや便の分布(腸の左右で溜まり方に違いがあるか、左右で溜まっている便の性状に違いがあるか、など)
  • 大腸のれん縮(けいれん)を疑う所見があるかどうか
  • 胃内の空気量

など

腹部レントゲン検査(腹部エックス線検査)では、これらの情報から腸の運動機能や形状などを評価することができるため、過敏性腸症候群の診断に有用な検査です。

大腸内視鏡検査(大腸カメラ検査)

大腸内視鏡検査(大腸カメラ検査)では、大腸内の粘膜や腸の動いている様子を直接観察し、下記の情報を得ることが可能です。この検査を行う一番の目的は、症状の原因となる大腸の病気があるかどうかを評価することです。

大腸カメラ
  • 大腸の粘膜に炎症など症状の原因となる異常はないか
  • 大腸ポリープや大腸がん等の症状の原因と異常はないか
  • 大腸の動きに異常が無いか(過剰な収縮や収縮力の低下はないか、など)
  • ねじれ腸や落下腸など、大腸の形に異常は無いか
  • 大腸カメラ検査時に空気を少し入れただけで痛みが出現しないか(腸の知覚過敏を起こしていないか)

など

大腸カメラ検査では、これらの情報から症状の原因となる大腸の病気(大腸がんや潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患など)があるかどうかが評価できます。また、腸の運動機能や形状なども評価できるため、過敏性腸症候群の原因での分類を行うのにも有用です。
大腸カメラ検査については、下記リンクをご参照下さい。

過敏性腸症候群の治療

過敏性腸症候群では、症状を引き起こしていると考えられる原因で分類したサブタイプごとに治療方法を考えるのが有用です。

1.腸管運動異常型IBS(ストレス型IBS)の治療

ストレスに敏感な体質が原因となって症状が出現する過敏性腸症候群です。また、ストレス以外にも食事や生活習慣、腸内環境の影響も関与していると言われています。このため、これらを調整する治療を行うと症状は改善しやすくなります。

①患者さんの認識を変える

腸管運動異常型IBSでは、まずは患者さんに「自分はストレス感度が敏感な体質であること」、「腸がストレスに反応しやすい体質であること」、「このため症状が現れていること」を患者さんにしっかりと認識してもらうことが大切です。腸管運動異常型IBSでは、自身の体質を受け入れてもらうことが治療の第一歩となります。
腸管運動異常型IBSでは、症状が現れたときに不安を感じたりすると、それがストレスになり、さらに症状が症状を呼ぶという悪循環に陥りますが、症状が出ても「またストレスを感じて腸が反応してしまっているんだな」と客観的に自分を認識することを繰り返していくと、徐々に腸がストレスに対して敏感に反応しにくくなっていきます。腸管運動異常型IBSでは、意識を前向きに変えていくのが最も効果的です。

②ストレスを洗い出して遠ざける

自分が何に対してストレスを感じているのかを明らかにして、可能であえば遠ざけましょう。症状の原因となっているストレスを遠ざけることが出来れば、症状は出にくくなります。

③生活習慣の改善

十分な睡眠を摂り、適度な運動を心掛けましょう。
また、1日3回だいたい決まった時間にきちんと食事を摂取する習慣を身につけましょう。
牛乳、コーヒー、アルコールは、下痢の原因となるため摂り過ぎに注意しましょう。
高脂肪食や不溶性の食物繊維の摂り過ぎも症状を悪化させます。これらの摂り過ぎにも注意しましょう。
また、過敏性腸症候群の方は、高FODMAP食の摂取を控えると症状が改善しやすいという報告もあります。

④薬物療法

症状に対する認識を変えたり、生活習慣の改善を行っても症状が改善しない場合は、クスリによる薬物療法を行います。腸管運動異常型IBS(ストレス型IBS)では、下記のクスリによる治療をおこないます。

セロトニン5-HT3受容体拮抗薬(ラモセトロン)

腸には神経の情報伝達を担うセロトニンという神経伝達物質が結合する受容体が多数あります。この受容体にセロトニンが結合すると、腸の運動が活発になるため、腹痛と下痢を起こしやすくなります。ラモセトロンは、このセロトニンが結合する受容体をブロックすることで腸の運動スイッチが入るのを防ぎ、症状を和らげます。
効果の高い薬ですが、薬が持っている腸の動きをコントロールする力以上に、ストレスなどの影響で腸の運動機能異常や知覚過敏が起こっている場合は、この薬を服用していても症状が残りやすくなります。薬で腸の動きをサポートしながら、症状に対する認識を変えていくと症状は徐々に改善傾向となります。
女性は男性よりも薬の血中濃度が高まりやすく、効きが2倍程度高いと言われています。このため、女性では使用量を男性の半分にする必要があります。

プロバイオティクス(整腸剤)

プロバイオティクスとは、腸内細菌のバランスを改善させることでヒトに有益な作用をもたらすことを期待した食品やクスリです。整腸剤がこれに該当します。過去の研究において過敏性腸症候群においては、腸内環境の改善を促進するプロバイオティクスは有効であると報告されています。

2.腸管形態異常型IBSの治療

大腸の形状に問題があり、便の通過障害が起こるため、症状が出現する過敏性腸症候群です。
腸管形態異常型IBSでは、腸の形に合わせた理学療法を中心に治療をおこないます。クスリによる治療は、排便のサポートの位置づけとなります。

① 理学療法(マッサージ、運動)

腸管形態異常型IBSでは、腸のねじれなどの問題で患者さんごとに便の通過障害が起こる部位が決まっています。そこで、便の通過障害が起こりやすい場所に合わせたマッサージや運動を行うことで、物理的に便の通過をサポートすると症状が改善しやすくなります。運動やマッサージを生活の中に無理のない形で取り込むことで自然な排便を促すのが理想です。

② 薬物療法

腸管形態異常型IBSでもクスリによる治療は行いますが、あくまでも排便のサポートの位置づけです。腸管形態異常型IBSでは、通常、ねじれ部分に硬い便が引っかかって、いわゆる糞詰まりのような状況になるため、おなかの不快な症状が出現します。 クスリで便をやや柔らかくして、ねじれ部分に便が詰まりにくくするのを目指します。

粘膜上皮機能変容薬(リナクロチド、ルビプロストン)
リナクロチド

大腸粘膜の上皮細胞にあるグアニル酸シクラーゼCという受容体に作用することで腸管内の水分分泌量を増やして便を柔らかくし、さらに腸管内の輸送能も促進することで、便が肛門へと輸送されやすくします。また、腸管の粘膜下の知覚神経を抑えることで内臓知覚過敏を改善させ、腹痛を感じにくくする効果もあります。

ルビプロストン

小腸粘膜の上皮細胞にある塩素イオンチャネルに作用することで小腸から腸管内への水分の分泌量を増やして便を柔らかくし、さらに腸管内の輸送能も促進することで、便が肛門へと輸送されやすくします。また、腸管透過性の亢進を抑制し、炎症を修復する作用もあります。若い女性では、吐き気の副作用がでやすいクスリです。大腸の下流が詰まっている状態でこの薬を服用し、小腸から多くの水分が分泌されると、この水分が逆流して吐き気が生じやすくなると考えられています。ルビプロストンの投与前に刺激性下剤や浣腸で大腸の詰まりをリセットしてから服用を開始すると吐き気は出にくくなると考えられています。

3.胆汁性下痢型IBS

胆のうから分泌される胆汁という消化液が原因で、食後に下痢を引き起こす過敏性腸症候群です。

① 薬物療法(コレスチミド)

本来は、脂質異常症の治療薬として使われるクスリで、通常、コレステロールを下げるために投与する薬です。
下痢の原因である胆汁酸と結合して無毒化して排出作用がある薬です。
胆汁性下痢型IBSの特効薬となりうる薬ですが、残念ながら過敏性腸症候群では保険適応となっていない為、保険診療では投与ができません。

② 生活サイクルの工夫

食後にしっかり出せるだけ便を出すなど、症状が日常生活に支障をきたさないよう生活サイクルを工夫するのが大切です。

当院の大腸カメラ検査の特長

大腸内視鏡検査過敏性腸症候群の確定診断のためには、内視鏡検査(大腸カメラ検査)で症状の原因となる腸の病気が他にないかをしっかり確認することが最も重要です。
過敏性腸症候群の場合、検査を受けることで命に影響する怖い病気がないことをしっかり認識することも、症状の改善にとって重要です。また、検査で過敏性腸症候群のサブタイプが特定できれば、より適切な治療まで行うことが可能です。
当院では、患者様の苦痛に配慮した内視鏡検査を提供しており、検査を受けた患者様から「想像していたよりもずっと楽だった」とのお声を頂けるようにスタッフ一同、日々努力しております。
どのように内視鏡スコープを操作すれば、苦痛に配慮した内視鏡検査になるのかを熟知した専門医が検査を担当します。
少しでも気になる症状があれば、ぜひ一度、お気軽にご相談ください。

監修:鹿児島中央駅西口消化器内科・胃大腸内視鏡クリニック  院長 細川 泰三

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