大腸ポリープ

大腸ポリープの日帰り手術とは?

大腸内視鏡検査大腸カメラ検査は、便潜血検査が陽性であった場合やお腹の不快な症状などがあった場合に、大腸に異常がないかを調べるために行う検査です。大腸カメラ検査を受けると、検査時に大腸ポリープが見つかることがよくあります。実際、大腸カメラ検査を受けた人のうち2人に1人以上で大腸ポリープが見つかるという報告もあります。
発見される大腸ポリープの多くは、将来がん化する可能性がある腺腫(adenoma)と呼ばれる良性のポリープです。腺腫を早期発見して切除すれば、将来の大腸がんを予防することができます。このため当クリニックでは、大腸ポリープが見つかった場合には、将来の大腸がんを予防するために、良性であっても切除することを強く推奨しています。事前に大腸ポリープの切除を希望されている患者様に対しては、検査時に大腸ポリープが見つかった場合、大腸ポリープの日帰り手術を行います。
通常、大腸カメラ検査は、観察のみの場合であれば約15分で終了しますが、大腸ポリープの日帰り手術まで行う場合は、ポリープの数やサイズによって時間が異なります。手術後の食事や運動などの注意点に関しては、切除したポリープの数やサイズによって患者様ごとに異なりますので、手術後に個別に説明致します。

大腸ポリープの日帰り手術が出来ない場合について

次のような場合には、検査時にポリープ切除を希望されていても、大腸ポリープの日帰り手術は手術自体のリスクや術後の合併症のリスクが高いため、入院による手術が望ましいと考えられます。このような場合は、治療可能な高次医療機関へご紹介いたします。

  • サイズが2cm以上の大きなポリープが見つかった場合
  • 多数の切除が望ましいポリープが見つかった場合
  • 大腸の屈曲部(ねじれの強い場所)などにポリープがあり、スコープの操作性が悪く手術のリスクが高いと考えられる場合
  • 基礎疾患(不整脈、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞など)で血液をサラサラにする薬(抗血栓薬や抗凝固薬など)を服用しており、検査前にこれらのクスリの服用を一時中止することができない場合
  • その他、基礎疾患の影響により手術のリスクや合併症のリスクが高いと考えられる場合(例:透析中など)

大腸ポリープとは?

大腸ポリープとは、大腸の粘膜表面から発生したイボのように盛り上がった病変を総称しています。大腸ポリープは、組織学的な特徴によりいくつかの種類に分類されますが、一部のポリープは将来大腸がんになる可能性があります。
良性の大腸ポリープには、腺腫(adenoma)、鋸歯状病変、過誤腫性ポリープ、炎症性ポリープ(Inflammatory polyp)などがあります。鋸歯状病変は、さらに過形成性ポリープ(HP:Hyperplastic polyp)とSSL(Sessile serrated lesion)、鋸歯状腺腫(TSA:Traditional serrated adenoma)に分類されます。また、過誤腫性ポリープは、若年性ポリープ(juvenile polyp)、Peutz-Jeghers型ポリープに分類されます。
これらのポリープの中で最も発生しやすいポリープは腺腫と言われています。腺腫は良性のポリープですが、将来大腸がんになる可能性があるため、大腸がん予防のために切除することが推奨されています。
また、鋸歯状病変のうち、SSL(Sessile serrated lesion)と鋸歯状腺腫(TSA:Traditional serrated adenoma)は将来大腸がんになる可能性があるため、大腸がん予防のために切除することが望ましいと考えられています。一方で、同じ鋸歯状病変であっても、過形成性ポリープ(HP)は、SSLや鋸歯状腺腫(TSA)と比べて、大腸がんになりにくいと考えられています。しかし、過形成性ポリープとSSLは、内視鏡上の見た目が非常に似ているため、見た目から過形成性ポリープとSSLを区別すること難しい場合が多く、過形成性ポリープを含む鋸歯状病変もある程度大きなものは、将来の大腸がん予防のために切除することが望ましいとされています。

大腸ポリープの症状について

大腸ポリープは、サイズが非常に大きくなって、便の通過を妨げるようになると、お腹の張りや便秘、下痢や腹痛などの症状が現れることがあります。また、ポリープの表面が擦れて出血することもあります。
しかし、ほとんどの大腸ポリープは、基本的に自覚症状がありません。
そのため、大腸がんの予防や早期発見・早期治療をするためには、自覚症状のない若い時から定期的に大腸カメラ検査を受けることが重要です。自覚症状がない場合でも、40歳までには少なくとも1回は大腸カメラ検査を受け、その後は定期的に検査を受けることをお勧めします。

大腸ポリープの原因について

加工物大腸ポリープは、主に遺伝子の異常が原因で発生すると考えられています。また、家族歴(血のつながった家族に大腸ポリープや大腸がんになった人がいる)などの遺伝的な要因、加齢、肥満、飲酒や喫煙、食習慣(牛肉・豚肉・羊肉などの赤身肉、ベーコン・ハム・ソーセージなどの加工肉、高カロリーな食事をよく食べる)などの要因も大腸ポリープや大腸がんの発生リスクを高めることが報告されています。

当クリニックで行う大腸ポリープの日帰り手術の種類について

◎コールドフォーセプス・ポリペクトミー(CFP:cold forceps polypectomy)

ポリペク内視鏡検査時に組織検査を行う際に使用する鉗子というマジックハンドのような器具でポリープを掴んで切除する手術です。鉗子で掴める5mm以下の小さなポリープを切除するのに適した手術です。手術後の傷が小さく、穿孔(腸に穴が開く)や術後出血などの合併症のリスクが少ない、安全な手術方法です。

◎コールドスネア・ポリペクトミー(CSP:cold snare polypectomy)

コールドポリペクトミースネアという鋭い金属で出来た輪でポリープを挟んで切除する手術です。スネアで切除する際に高周波電流を流さずに切除するため、手術に伴う穿孔(腸に穴が開く)や術後出血などの合併症が少ない安全な手術方法です。しかし、大きなポリープは高周波電流を流して組織を焼き切る必要があるため、コールドスネア・ポリペクトミーで切除できるポリープは、サイズが10mm未満のものになります。

◎ホットスネア・ポリペクトミー(HSP:hot snare polypectomy)

ポリペクトミーサイズが10mm以上のポリープや茎があるタイプのポリープなど、しっかり切除する必要がある場合に行う手術です。スネアという鋭い金属で出来た輪でポリープを挟み込んで掴むところまでは、コールドスネア・ポリペクトミーと同じですが、切除する際に高周波電流を流して電流の熱の力で組織を焼き切ります。大きなポリープでもしっかり切除ができる手術ですが、電流の熱が加わったところは火傷を起こすため、非常に稀ですが、術後に穿孔(腸に穴が開く)や出血などの合併症を引き起こすリスクがあります。

◎内視鏡的粘膜切除術(EMR:endoscopic mucosal resection)

内視鏡的粘膜切除術形が平べったく、サイズが10mm以上のスネアで掴みにくいポリープやしっかりと切除する必要がある早期大腸がんが疑われるポリープを切除する場合に行う手術です。
良性のポリープや早期大腸がんの場合、病変は大腸の粘膜部分に存在しています。病変が存在する粘膜の下の粘膜下層に注射の針を刺して生理食塩水を注入すると、ポリープの部分が山のように膨らみます。この膨らんだ部分をスネアでしっかりと挟み込み、高周波電流を流して電流の熱の力でポリープを焼き切ります。生理食塩水を注入することで、スネアでポリープが掴みやすくなるだけでなく、ポリープの下の層を厚くして切除するため、大きなポリープを切除する場合でも術後に穿孔(腸に穴が開く)の合併症が起こりにくく、安全に手術が行えます。ただし、稀ではありますが、術後に出血などの合併症が起こるリスクがあります。
ポリペクトミーと比べると、EMRは内視鏡医の技術が要求される手術であり、粘膜下層に注射をする分だけ手術時間も長くなります。

大腸ポリープの日帰り手術後の注意点について

大腸内視鏡検査大腸ポリープの日帰り手術後に起こる最も多い合併症は、術後の後出血です。
切除したポリープのサイズや数、行った手術の種類によって、術後に後出血が起こるリスクは異なります。また、基礎疾患に対して血液をサラサラにする薬(抗血栓薬や抗凝固薬)を服用しているかどうかなどによっても異なります。
ポリープ切除後の後出血を防ぐために、術後はしばらく食事や飲酒、入浴や運動、旅行や出張などに制限が必要です。切除したポリープのサイズが小さく、数も少ない場合は、手術当日のみこれらに関して制限が必要ですが、手術翌日からは普段通りに過ごせます。切除したポリープのサイズが大きかったり、数が多い場合や血液をサラサラにする薬(抗血栓薬や抗凝固薬)を服用している場合は、これらに関する制限が約1週間必要です。
*ポリープ切除後の注意点は、切除したポリープのサイズや数、行った手術の種類、血液をサラサラにする薬(抗血栓薬や抗凝固薬)を服用しているかどうかなどにより、患者様ごとに異なります。手術後に医師から個別に説明致します。
*大腸ポリープ切除後に腹痛や血便、発熱などの症状があった場合は、必ずご連絡ください。

監修:鹿児島中央駅西口消化器内科・胃大腸内視鏡クリニック  院長 細川 泰三

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